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ダラダラだらけの鳥野郎の呟き
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 季節に合わせて、花見の噺をさせていただきましょー。こいつは古典落語「長屋の花見」がもとになっております。

王宮の会議室に掲載したのとほぼ一緒でございますんで、その辺はご注意を。

この季節になると、どこそこの桜が咲いただ、どこそこが満開だと、次から次へとニュースが流れてきまして、さあ、花見にはいつ行こう、どこに行こうと、そこかしこから聞こえてくるものでして、

「花見に行ったんだってな。どうだった?」

「いや、大変な人だったよ、出店とかもあってな、楽しかった」

「へえ、花はどうだった?」

「花?咲いてたかなぁ」

 まあ、実際、花はどうでもいいことが多いようなんですが。


「はい、みなさん、ちょっと集まってくださいよ。そろって王宮に連れて来るように、王様に言われたんでね」

「なんだい、ナベさん?」

「さあ、行ってみないと分からないが、だいたい見当はついてる。たぶん税金のことじゃねえかと」

「税金?税金を王様がどうしようってんだい」

「そりゃあ、徴収するんだろう」

「何?ずうずうしい野郎だ」

「ずうずうしいってことはねえだろうな。で、どうなってんだ税金のほう?」

「いや、面目ねえ」

「ってえと、払ってねえな、去年のやつかい?」

「いや」

「すると、一昨年のも貯めてるのかい?」

「いや、払った覚えがねえ」

「ひでえな、おい。で、そっちは?」

「なんだい、こんなとこでもやっぱり払わないとだめなのかい」

「こんなとこだから、ちったあ払ってやれってんだよ。おっ、そっちは?」

「えっ、その税金てなんだい?」

「おいおい、知らねえ、やつもいたよ。税金てなあ、国に納めなきゃなんねえ金のことよ」

「へえ、そんなものまだもらったことがねえ」

「おい、この野郎はもらう気でいやがる、どうしようもねえな。払ってるやつはいねえのかい?」

「親父が臨終の際に、俺の手を取って『息子よ、俺の代は、ついに税金を払うことはなかった。お前も、税金を払おうなんて了見を起こしてくれるなよ』と」

「そんな遺言を残す親がどこにいんだい。こりゃ、税のことを言われても仕方ねえな。まあ、とにかく行くだけ行ってみようじゃねえか」

・・・

「王様、おはようございます」

「おはようございます」

「おはよう」

「おはようござい」

「おはよう」

「おいおい、そんなにいっぺんに言うとうるさくてかなわない。一人でいい、ひとりで」

「えー、それでは外務の私が代表して、おはようございます。で、言いつけどおり、全員連れてきましたけど、なんでございましょ?」

「おいおい、挨拶だけは威勢がよかったが、だんだん扉の外まで遠ざかってるじゃないか?もっと、こっちに来なさい」

「いえ、ここで結構です。すみませんが、税金のほうはもう少し待っていただけないかと・・・(ごにょごにょ」

「何ごにょごにょ行ってんだ。税金?そう思ってくれたのはありがたいが、今日はその話じゃない」

「そうですか、諦めましたか」

「いや、諦めてはない」

「まだ未練があるのか。わりと執念深い人だ。ものごと諦めが肝心だ」

「おいおい、冗談を言わないでくれよ。まあ、いいから、こっちに来なさい。しかし、いい陽気になってきたな」

「へえ、こちとら頭の中はいつも陽気に浮かされております」

「バカなこといってんじゃないよ。この陽気で桜も咲いて、世間では花見に出かけてるというじゃないか」

「へえ、結構な身分で。俺たちも花見を楽しめる身分になってみたいもんで」

「それだ。わが国も貧乏国家といわれてるが、このままではいけない。ひとつ花見にでも繰り出して、貧乏神を追い出そうじゃないか、みんな」

「花見ねえ。で、どこまで?この辺は岩山ばかりでろくに木も生えてませんが?」

「確かクロタ岬の方まで、行けば桜の木もあったと記憶してるが」

「えー、するとあそこまでゾロゾロと出かけて、花を見て帰ってくるというわけなんですか?」

「歩くだけなんて、そんな間抜けな花見があるか。酒と肴をもってってわっと騒がないでどうする」

「酒と肴ねえ・・・。そんなものがどこにあるんですか」

「そっちは心配するな。ちゃんと用意してある」

「へえ、王様が用意してくださったんで?」

「これを見なさい。一升瓶3本に赤ワイン2本、それと、この重箱の中には、から揚げ、肉団子、コロッケ、かまぼこ、玉子焼きが入ってる。このぐらいしか用意できなかったが行くかい?」

「行く、行く、行きますよ。ええ、ゴアでも冥界でもどこでも」

「いいよ、そんな遠くまでついてこなくても。それじゃ、行くかい」

「はい、よろこんで。おい、みんな、お礼を言おうじゃないか。ありがとーございます」

「へい、どうもありがとうございます」

「ごちそうさまです」

「どうも、ごちになります」

「おいおい、そんなぺこぺこ頭を下げられると、決まりが悪いな。・・・まあ、向こういってから愚痴が出ても困るから、種明かししておこう」

「種明かし?」

「ああ、実は、この一升瓶、中身は酒じゃない」

「えっ?」

「これは番茶の煮出したヤツを水で薄めたんだ。酒っぽく見えるだろう」

「てことは、こえはお酒じゃなくて、おチャケですか。驚いたね、酒盛りじゃなくておチャカ盛りだよ。で、そっちのワインは本物ですかい?」

「ああ、これは、これまで、この爪で小突いて出させた血を薄めたものだ。さすがに飲めとは言わないがそれらしく見えるだろう」

「ああ、これまで我々が流した血は無駄じゃなかった、ってそんなもの集めて、とって置いたんですかい。こっちのお重のほうは、本物ですよねえ・・・」

「それを本物にするぐらいなら、五合でも酒を買う」

「ってえと、これは?」

「フタを取ればわかるが、から揚げは石に赤土をまぶして揚げたもので、コロッケは土を丸めたのに、赤土まぶして揚げたもの、肉団子は土を丸めただけだ」

「こりゃ、驚いた。子供のままごとみたいに、土を食えってよ」

「いやいや、食べれるものもある。かまぼこは大根を月型に切ったもの、玉子焼きは黄色いから沢庵だ」

「ガリガリのジャリジャリでなければ、バリバリのポリポリだとさ」

「まあ、いいじゃないか。向こうに行って、『まあ、一杯、おっとっと』とやったりとったりしてれば、それっぽく見えるだろう」

「そりゃあ、そうでしょうけど、・・・おい、どうするよ」

「御免こうむってよろしいですか」

「すいません、俺もちょっと」

「へえ、そうかい、お前たち。何なら赤ワインをもう2、3本増やしてもいいんだよ」

「王様、脅しっこなしですよ。分かりましたよ。行けばいいんでしょ、行けば」

「まあ、人も大勢出てることだし・・・」

「がま口のひとつやふたつ」

「そうそう、落ちてねえとも限らねえ」

「おいおい、変なこと言うもんじゃないよ。まあ、いい。行くんだね?なら、ちょっと外務と軍務の二人に働いてもらおう」

「仕方ねえなあ。で、何でしょう、王様」

「その後ろにある毛氈を持って来てくれ」

「毛氈?どこにあるんです?」

「その隅にあるだろう」

「王様、これはむしろですよ」

「いいんだよ、毛氈で。はやく持って来い」

「はいよ、むしろの毛氈だ」

「よけいなことは言わなくていいから、二人でかついで持ってくるんだよ」

「へえ、むしろの包みを担いでね・・・こりゃあ花見に行く格好じゃねえな。どう見たって犬の死んだのを捨てに行くようだ」

「変なこと言うんじゃない。他のものも一升瓶やなんかを持ちな。湯飲みや茶碗も忘れないように。支度はいいかい?じゃあ出かけよう」

「はいはい、では担ぎますか。行きますよ。ご親戚の方、揃いましたか?」

「おいおい、弔いにでるんじゃねえ。陽気に出かけようじゃないか。それ花見だ、花見だ!」

「夜逃げだ、夜逃げだ」

「誰だい?変なこと言ってるのは?」

 

ええー、そんなこんなで、桜のあるクロタ岬へとぞろぞろと歩いていきますと、、、

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